マインド

ホストで学んだマインド-自分の限界の話-

 

まだ人に何かを与える器じゃない。

 

必死だった。

自分を変えたくてあらゆることを試した。

自己啓発本の類はたくさん読んだが抜本的な解決にはならない。

いろんな人に会いに行ってはヒントをもらう。

 

縁があってナンパの世界を知る。

時には折れそうになりながらもナンパに明け暮れた。

 

見た目の改善、恋愛商材、オンライン講座、セミナー、講習。

全財産と時間をかけて自分自身に投資した。

 

それでも納得いかなくて生活を捨てホストを始める。

そこで夜の世界や生き方を学んだ。

 

ホストを始める時に自分に約束した。

自分の人生に責任を持ち、どんな時も自分を信じて前向きに捉える、と。

 

だが、自分の甘さを嫌というほど思い知ることになる。

 

最初は新しいことばかりで楽しかった。

毎日ワクワクしていた。

店のみんなも優しく、歓迎してくれる。

仕事柄、店でのトラブルは少なくはなかったが良い店だと思った。

結果が出ないことに対しても継続的努力により結果が出ると思っていた。

 

 

だが、とにかく結果が出ない。

1、2ヶ月もすると同期との差も明確になる。

同期で元からモテるタイプは徐々に結果を出し始めた。

 

店が終わった後は外で営業のためのナンパをする。

同期の人も同じように声をかける。

昨日今日ナンパを始めたばかりの奴がいきなり連れ出し。

1、2週間もすれば僕よりもナンパが上手くなる。

 

生きてきた環境が違いすぎる。

努力以前の問題だった。

小さい頃から女の子と関わり続けている。

非モテ出身の自分が半年ナンパやってた程度では全然追いつけないんだと痛感した。

 

一方で僕と同じようなタイプもいる。

お互い励まし合って頑張っていた。

 

だが、そういった人たちはいつのまにか消えていった。

残っていたのは僕だけだった。

 

しんどい時期が続くとジワジワと心は消耗する。

自分の才能のなさと向き合うのにも嫌気が刺してくる。

 

まともに受けてると心がもたない。

真面目なだけじゃ笑われてしまう。

丈夫なだけじゃ壊れてしまう。

 

焦りを感じながらホスト生活3ヶ月目に入る。

荒れていた。

生活がギリギリだった。

パンやうどんを食べて食費はギリギリまで抑えた。

 

同じ夜の世界でも男と女では性質が異なる。

居るだけで時給が保証されるのは女性だけだ。

 

ホストは結果が全て。

週6で入っても結果が出なければ、給料は最低限度。

コンビニでバイトをしていた方がずっと稼げる。

多少でもお金のためならモチベーションを保てる人は多い。

頑張った対価が何もないのはキツかった。

 

もちろん女には女の厳しさがある。

わかってるけど言い訳したくなる。

 

暴力的な自分が顔を出す。

物に当たってしまうこともあった。

人に対して雑になることも増えてきた。

 

怒らない。ポジティブ。

そんな自分を好きでいたかったのに。

良いところまで壊れていくような気がした。

 

僕は店の酒を好き勝手飲むようになる。

酒に溺れることが日に日に多くなる。

アルコールが僕を救ってくれるような気がした。

 

だが、何も消えない。

虚しさだけが残った。

 

 

 

そんな時期に大学時代の友人の結婚式があった。

大好きで本当に尊敬できる友人の1人。

自信があって、男らしくて、仕事もバリバリできて、綺麗な奥さんを連れて。

純粋に祝福していたし嬉しかった。

嫉妬という感情はなかったように思える。

 

一方で、自分に対して様々な感情が渦巻いていた。

自分は今なにをやってるんだろう。

本当にこの道でよかったのか。

イバラの道は本当に報われる日が来るのか。

自分で決めたことなのに後悔の念が頭をよぎった。

 

二次会で糸が切れたように感情が爆発した。

今日もお酒を飲みすぎてしまう。

 

暴れて。

外へ飛び出して。

一人で泣いた。

 

友人の晴れ舞台に何をやっているんだろう。

当時の自分には眩しすぎたのかもしれない。

完全に闇に飲まれていた。

 

朝になって合流した時、友人が励ましてくれた。

友人の優しさが逆に辛かった。

その暖かさに寒気がした。

そんな自分がまた嫌いになりそうだった。

 

 

結婚式からしばらく時が経つ。

闇に呑まれた僕を見かねて店のオーナーが言った。

 

お前は頑張ってるかもしれない。

だけどまだ本気じゃないよな?

2週間でいいからマジで死ぬ気で頑張ってみろ。

眠くても寝るな。体調悪いとか言い訳するな。

俺の言いたいことがわかるか?

1回限界を超えてみろ。

絶対何か掴めるから。

 

体育会系は嫌いだし根性論はなおさら大嫌いだった。

だが、その言葉は痛いぐらいに刺さっていた。

何もかも綺麗にやろうとしすぎなんだ。

そんな自分に気づかされたからだ。

 

1番尊敬していた先輩からもこんな話をされる。

 

人それぞれ持っているものが違う。

誰もが100%売れる正解はないから。

聞いてくれたら納得いくまで教えるし、

俺にとっての正解ならいくらでも教えられるけど、

最後は自分で掴まないといけないよ。

 

売れるようになる道は百とか千とかパターンがあるけど、

行動して失敗することで失敗のパターンを潰していくしかない。

そうやって正解にぶち当たるまで試行錯誤を繰り返して。

 

運良くすぐに正解のパターンに当たる奴は、一時的に売れるけど長くは続かない。

落ちた時に踏ん張れないやつはそのまま消えてくし、

いつまでも1つの正解に縛られ続けている人をたくさん見てきてる。

何でもやってみて、いっぱい失敗してこい!

 

ナンパもそうだけど再現性100%のものなんて存在しない。

色恋だとか本営だと自分の価値観から外れるものはやっていなかった。

行動はしていても、無意識に嫌いなパターンを避けていた。

 

まだ本気ではやれていなかったんだ。

人を騙す前に自分を騙せないといけない。

何でもやってみないとわからないよなあ。

 

 

それから2週間ずっとお客さんを呼ぶことだけを考えた。

余計なことを考えるのをやめた。

気分転換にネットやツイッターを見るのをやめた。

 

空いた時間はずっと外に出て声をかける。

もうナンパをしているという感覚はない。

人がいたら声をかける。

店でも声をかける。

電車でも声をかける。

 

1日100声かけ?

そんな区切りはない。

いちいち数えることに脳のキャパを使いたくはなかった。

もっと声をかけていたはずだ。

声かけは雑になっていたかもしれない。

だが、当時そんなことを考える余裕はなかった。

コミュニケーションに溺れた。

 

ぶっ倒れそうになりながら寮に帰って死んだように眠る。

効率なんて考えない。

何か考えるのは寝ている時ぐらいでいい。

 

僕には時間がない。

お金もない。

何もない。

 

色を使うことにもためらいはなくなっていった。

暮らすために殺す。

人と浸かる。

 

メンヘラとも嫌になるくらい関わった。

ナンパだったら可愛くてもすぐに切る。

約束は破るし、何でも人のせいにするし、自分のことしか考えていない。

普通にムカつく。

だけど、店に来てくれる可能性が残っているなら切るにきれない。

 

スト値1の女も抱いた。

嫌悪感が酷かった。

 

そのくらいしないといけないものなのか?

それは人によると思う。

僕にはこうするしかなかった。

 

綺麗事だけじゃ生きられない。

思い知ったよ。

自分が今までいかに綺麗に生きてきたのかを。

それはもう痛いくらいに。

 

 

 

2週間後。

新規からの指名は1人だけだった。

例のスト値1の女の子だけ。

お金はほとんど持っていない。

自分の全てをかけた結果がこれだった。

 

めちゃくちゃ頑張った。

つもりだった。と、今回ばかりは言えない。

本気でやっていたと思う。

 

どこかスッキリしている自分がいた。

やっぱり向いていないなとも思ったし、

限界に近いところまで来て掴めていたものはあった。

いろいろ思うこともあって店を辞めることにした。

 

 

そしてホスト生活最後の月。

 

やめる直前になって出会った子が3人来てくれた。

ホストとしては反則気味だけど友人が5人飲みに来てくれた。

新規で入ってそのまま指名で飲んでくれる子もいた。

 

努力してもすぐに結果が出るとは限らない。

それを知りつつも、先が見えないと多くの人はやめてしまう。

 

小さいことかもしれない。

でもちゃんと結果出たじゃん。

辛いことや苦しいことも全部伏線だって。

わかってたはずなのに。

 

わずかながら最後に結果を残せたのは良かった。

ギリギリで間に合った。

本当に嬉しかった。

 

このまま続ければもっと結果は出るかもしれない。

だが、店をやめる決意はなおさら固くなる。

 

1つは歌舞伎町を歩いていた時に起きた1つの事件。

ナンパ師がホストを辞めた話-情を捨てる覚悟と歌舞伎町の闇-

 

 

そしてもう1つ。

「ホストじゃなくてもいいんじゃないか?」

単純にそう思った。

 

自分の限界値に上限がないことを知った。

この努力を他に向けることができたら、他に価値を生めるのではないか?

限界を勝手決めつけていたのは自分だったんだ。

 

ホストを始める前のことを考えていた。

週7でナンパする発想はあったのか?

あらゆる時間削ってナンパにコミットする覚悟はあったのか?

 

ナンパを始めた当時は月300声かけしようと意気込んでいた。

基準が全然甘かった。人間本気になれば余裕で到達できる。

 

限界は存在しない。

自分で限界を決めてしまっているだけだ。

 

数だけじゃダメだけど、数を打たないとわからないことがある。

少なくとも綺麗にやれるほど器用なタイプではない。

まだまだ頑張れた。

 

ホストを経験をして特に身に染みたのは、

限界を決めつけていた自分に気づけたこと。

無意識に嫌なパターンを避けていた自分に気づけたこと。

 

嫌なパターンを通るからこそ成功に近づいたり、

自分の長所をさらに伸ばせることがある。

 

言葉でわかっていたつもりだったが、

ようやく腑に落ちるレベルまで降りた。

そのマインドは一生の財産。

 

自分の人生に責任を持ち、どんな時も自分を信じて前向きに捉える。

もう約束は破らない。

 

 

たとえばアルコールが僕を救うこともあるかもしれない。

だけどアルコールに救われるような人生なんて。

 

アルコールだけじゃない。

何かに逃げる人生なんて。

 

依存した先には何もない。

自分の人生を生きる。

 

 

ホストを上がって1ヶ月後。

僕はナンパ師として街に戻る。

 

ああ、もう営業とか考えなくていいんだ。

心からナンパできる。

足枷が外れたようだ。

 

 

自由に女の子を愛せることが楽しくて仕方なかった。

 

本音で話せることが嬉しくて仕方なかった。

 

こんな当たり前のことがこれほど楽しいなんて。

 

気づかなかった。

 

 

 

がむしゃらに走っている時は痛みを伴う。

 

自分の変化には気づけない。

 

 

どこまで来ただろうか。

 

一度立ち止まって振り返ってみる。

 

 

 

 

景色が変わっていた。

 

 

 

 

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ABOUT ME
なっち
恋愛、仕事、お金、人間関係、低身長、いじめ、劣等感、コミュニケーション、社会不適合、あらゆるコンプレックスと向き合う過程で自分が本当に欲しかったものは自信であることに気づく。 20代後半。身長150台。夜職経験あり。 コンプレックスだらけだった自分がストリートナンパをきっかけに人生を切り開く。 人生を賭けて自信を追求中。