ナンパを起点に理想の人生を追求する

金と女と人生(前編)-金に縛られた生活-

この記事は6分で読めます

 

金と女。

それは死ぬまで付きまとう問題。

 

 

借金と恐怖

 

僕は一般家庭に生まれた。

金運がないことを除けば、至って普通の家庭だった。

 

事件が起きたのは僕が中学生の時。

叔父が投資で大失敗をして莫大な額の借金を抱える。

 

父はその連帯保証人になっていた。

つまり問答無用で借金を全て肩代わりしなければならない。

到底すぐに払えるような金額ではなかった。

この事件をきっかけに生活は一変する。

 

頻繁に不審な車が停まるようになる。

後をつけられる。

詐欺まがいの営業訪問。

身に覚えのない配達。

 

金を返せという脅迫、家族への悪口、詐欺。

そんな電話や手紙の数々。

学校や職場にも届く。

警察に相談しても好転はしない。

嫌がらせは10年間続く。

 

取り立て屋が集団で家に押しかけてきた日。

相手も馬鹿ではないから手は出してこない。

だが、帰る様子がない。

 

 

その時、父はまとまったお金を用意していた。

お金を払った途端に彼らは優しい表情になる。

”金さえ払えば”とはこのことだった。

 

父は家族を守るのに必死だった。

いろんな所からお金を借りていたことが後で発覚する。

問題が問題を呼び、母はストレスで胃潰瘍に。

金のせいで家族の関係は悪くなっていった。

 

欲しい物が買えない。

生活が質素になる。

それらは仕方がないこと。

嫌がらせも耐えることはできる。

 

しかし、親が金のことで口論をしている。

それがほぼ365日。

金の負の側面を毎日のように浴び続ける。

嫌で嫌で仕方がなかった。

 

金さえあればこんなことにはならなかったのに。

金さえあれば解決できるのに。

金さえあれば。

金が全て。

 

そんな価値観が形成される。

金がなくてもいいなんて綺麗事だ。

人は人だとかそういう言葉は聞きたくなかった。

そうして僕は金に対して恐怖を感じるようになる。

 

 

金と学校生活

 

中学の成績は悪かったが必死で勉強した。

高校受験は公立と学費が免除される私立のみを受験。

公立に受かるも、金に苦しむ日々は続く。

父の勤める会社が倒産。

度重なる泥棒の被害。

何かが取り憑いているとしか思えなかった。

 

用心深くしていても盗まれる。

個人情報、家にいる時間帯、行動パターンは全て把握されていた。

そうでもなければ盗まれることがないと言える手口だった。

対策しては新しい手口の繰り返し。

勝ち逃げされたままイタチごっこは続く。

 

1日でも気を抜いたらやられる。

忘れた頃に狙われる。

今でも枕元に貴重品を置かないと落ち着かない。

そのぐらい金への警戒心は強くなる。

 

教員志望だった僕は大学を卒業する必要があった。

安定した収入、解雇や倒産の心配もない公務員。

教員を目指す僕を両親は快く応援してくれた。

 

大学受験は学費が安い国立が第一志望。

だが、センター試験で大失敗。

前期試験で逆転を狙うも不合格。

 

皆が受験を終える中、3月中旬まで勉強した。

しかし、震災の影響で後期試験は中止。

チャンスはもらえなかった。

 

浪人するにしても金銭的に予備校は通えない。

私立の大学に合格していたのは唯一の救いだった。

奨学金をフル活用して大学に通うことにした。

 

 

大学に行っても金の価値観は変わらない。

金が減っていくこと。

金を使うことがとにかく怖い。

 

勉強する時は図書館かフリースペース。

タクシーは死んでも使わない。

いかに安く物を買うかの追求。

 

クーポンとスタンプを使いこなしてカフェ代は平均100円以下。

スタバは高級店。選択肢にない。

6本入り100円のチョコスティックパン。

1杯130円のはなまるうどん。

何を食べたいかではなく、いかに安く食べられるか。

ファミレスでも何でもそうだった。

質よりも量が全て。

 

だけど金のせいで人との縁を失うのは嫌だった。

金か人で迷う場合はなるべく人を優先した。

1回3000円の飲み会は毎回首が絞まるような思い。

どうしても金がない時は1人で時間を潰して2次会から参加。

その代わり、人と過ごす時間は大切にできた。

 

 

卒業との戦い

 

 

除籍の連絡が突然家に届く。

理由は学費未納。

奨学金から払っていたはずだったはずの学費。

それは度重なるトラブルによって消えていた。

 

既に金融機関のブラックリストに入っている。

クレカは使えない。

お金も借りることができない。

 

退学になったら今まで払ってきた分が全て無駄。

教員にもなれない。

それだけは避けたかった。

 

塾講師、夜勤、派遣。

大学へ行って夜勤に向かい、適当なベンチで寝てそのまま大学。

どこでも寝れるように毛布は持参。

そんな日々が続く。

 

理系で教員免許をとるのは苦労した。

通常卒業に必要な単位は125〜130。

一方、僕には170単位が必要だった。

休める回数を計算しつつギリギリで単位を取った。

 

「邪魔だから出て行け」

「バイトしてる暇があったら勉強しろ」

授業中に爆睡していると怒鳴られることもある。

 

単位を取るためだけの退屈な授業。

やる気以前に体がついていかない。

好きでバイトしてるわけじゃない。

そう言いたくなる気持ちを抑える。

教授にとってこちらの事情は一切関係がない。

ただただ悔しかった。

 

 

ある日の夜勤帰り。

最寄駅につくと、僕は膝から崩れ落ちた。

その場に座り込んで動けなくなってしまった。

 

最寄駅に着いて気が緩んだせいだろうか。

気づくと救急車の中にいた。

 

 

動けない。

過労死しなくて良かった。

今日はバイトがないから迷惑をかけなくて良かった。

 

朦朧とする意識の中、他人事のように自分を見つめた。

疲労は確実に体を蝕んでいた。

気合いだけでは壊れてしまう。

自分のことなのに気づかない。

 

そんな僕を見て両親にも無理をさせてしまった。

両親は高齢にも関わらずダブルワークを始めた。

疲れた表情を見ると申し訳ない気持ちになった。

 

そうしてギリギリで学費を払い込む。

除籍は取り消された。

 

僕だけではどうにもならなかった。

家族で勝ち取った大学生活。

両親には本当に感謝している。

いつか恩返しをしたい。

 

 

彼女の言葉

 

そんな僕にも彼女がいた。

初めてまともに付き合えた彼女。

1つ下のサークルの後輩。

友人の助言がなければ付き合うことはなかっただろう。

 

付き合っても贅沢はできない。

家で遊んだり、散歩したり、公園を巡ったり。

食事もファミレスとかラーメンとか庶民的なものを。

もちろん全て割り勘。

 

それでも彼女は楽しそうにしてくれた。

そんな僕のことを愛してくれた。

 

思い出に残る日、喧嘩して仲直りした日、記念日。

僕たちはハーゲンダッツを2つ買って食べた。

ささやかな贅沢。

その時間が本当に幸せだった。

 

金があればもっと楽しませてあげられるのに。

金があればもっといろんな所へ行けるのに。

金があれば。

 

その一方で僕は完全に金に支配されていた。

 

金に困らない生活。

安定。安定。安定。

 

教員を目指したのにも安定が絶対の条件にあった。

 

 

ある日、僕は彼女に金の話をした。

金に縛られてきた人生について少し投げやりに語る。

 

「金がないと何もできない」

「もっと稼ぐから待っててほしい」

「そしたらハーゲンダッツだって毎日食べられる」

 

彼女は静かに僕の話を聞いてくれた。

 

 

「たまに食べるハーゲンダッツがいいんだよ」

 

 

彼女はそう言って優しく微笑んだ。

 

 

金がなくとも確かに僕は幸せだった。

”いかに金に取り憑かれていたか”

それを噛みしめるほどに痛感した。

 

 

彼女の言葉は深く心に残っている。

死ぬまで消えることはない。

そんなことを言ってくれた彼女が愛しかった。

 

金は死ぬほど大事。

だけどいくら金を積んでも買えないものだってある。

金に目が眩んで本当に大切なものを見落とすな。

 

僕は生まれて初めて金の価値観を見直した。

 

 

卒業旅行と別れ

 

大学四年間はあっという間だった。

大学で仲が良かったメンバー。

卒業旅行は僕だけ行かなかった。

金を借りてでも行きたかった。

だが、当時の僕にとって金を借りることは恐怖でしかなかった。

 

それから一年後。

今度は1つ下の彼女が大学を卒業する。

彼女は卒業旅行がしたいと言った。

社会人になった僕は少しだけお金に余裕があった。

 

「一年遅れの卒業旅行だね」

そう言って旅行のきっかけを作ってくれた。

 

旅行は最初から最後まで本当に楽しかった。

今でも鮮明に覚えている。

 

金を使うことで得られるものは計り知れない。

金に縛られた生活から少しずつ抜け出したい。

 

金を使う喜びを初めて知ったような旅行だった。

 

 

そんな彼女は卒業と同時に地元に戻る。

彼女が勤めた会社はブラックだった。

 

 

最初の1ヶ月は新入社員として頑張っていた。

だが、すぐに雲行きは怪しくなる。

徐々に増えてくる不満。

何があっても支え続けようと思った。

僕はこれまでたくさんのものをもらっていた。

今度は僕の番だ。

 

愚痴が多くなるにつれて喧嘩も増える。

今までは会うことで仲直りができた。

しかし、会社の休みは全く合わない。

距離もある。金もかかる。

喧嘩の度に会うことは困難だった。

電話では修正できないほどに僕たちの溝は深くなっていく。

 

彼女がネガティブになる原因は”仕事”と”家族”。

それはハッキリしていた。

「会社を辞めて東京で新しい仕事を探せばいい」

解決方法もわかっていた。

 

それでも強くは言えない。

僕には金にも心にも余裕がなかったからだ。

東京に来るとなると金がかかる。

多忙すぎて会社を辞めなければ就活はできない。

車だって買ったばかりだと言う。

 

いざとなった時、生活面で彼女を支えることができない。

だから無責任なことは言えなかった。

方法はわかっているのに僕はあまりに無力だった。

 

関係は徐々に悪化の一途を辿る。

削られるように摩耗していく。

僕の限界も近づいていた。

 

もう厳しいかもしれない。

それは彼女への態度にも出てしまう。

 

察した彼女が別れ話を切り出した。

僕ももう止めなかった。

 

 

金がなければ大切な人も守れない。

 

 

金に対する価値観は再び変移していく。

 

 

 

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